FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

翻訳者と翻訳者資格

翻訳者と翻訳者資格

私の会社では公文書の翻訳をたくさん扱っているので、オーストラリアの永住権を申請する人たち、あるいは留学する人たちから戸籍謄本翻訳の問い合わせがよくある。ブログからもある。よくある問い合わせの中に、NAATIの資格を持つ翻訳者ですか?という質問がある。

NAATIというのは、NAATIの目的にもはっきりと書かれているように、オーストラリア国内で翻訳、通訳をするプロフェッショナルにアクレデーションを与えるものなので、日本法の法管轄権内である日本国内で翻訳をする翻訳者には何の効果も及ぼさないし、オーストラリアの移民局の日本向けホームページでも日本でオーストラリア移民局に申請するビザ関連書類に添える英語の翻訳をNAATI保有翻訳者がしなければならないという要件は一切要求していない、というのが事実である。

ところが一部この事実と異なる情報、または意図的にこのような誤解を招くようなミスリーディングな情報を流しているサイトがあるので、迷惑なことなのだが、まわりまわって何の罪もない弊社にこのようなサイトを見た人からこのような質問が多く寄せられる。翻訳者の資格にはNAATI以外にもアメリカ、イギリス、カナダなど主要な国はどこにもATA、ITI、CTTICなどがあるのだがこれらについて質問をされることはないので、NAATIだけにこの質問が集中するのは明らかにこの不適切な情報が原因らしい。不要な時間がとられてしまい、困るのだが、ネットの世界はあらゆる情報が飛び交うのが宿命なので、対処するしかない。
このような質問をしてくる人はすでに先入観を持っているためか、過去の経験から上記のような説明をして説得しようとしても効果が薄いことが多いので、「いえ、NAATIは適用しておりません。」と答え他の翻訳会社を探すようにお願いしている。

ところで、NAATIの翻訳の資格は言語の方向別であり、すなわち、日→英の資格と英→日の資格は全くの別物であり、日本語の戸籍謄本を英訳するのにNAATIの資格が必要だとすれば日→英のNAATI資格でないと意味がないのであるが、このような質問をしてくる人はこのような肝心なことは知らされてないことが多い。翻訳の世界(特に欧米)では、翻訳はネーティブの方向にのみ翻訳すべきである、という考えが強く、最近永住権申請に有利などの理由からNAATI留学などもあり日本でも全体的な資格保有者は増えているとはいえ、日本国内在住のNAATI保有者は英→日が主流であり、日→英のNAATIを持っている人に限って言えばかなり限定的である。

日本語の公文書の英訳といえば、アメリカ、オーストラリア、カナダ、イギリス、香港などが多いのだが、これらの国はいずれも国家資格に準ずる翻訳者資格がある。公文書の翻訳に翻訳証明書というものを適法に発行できるのは各国の翻訳者協会の認定資格(ATA、ITI、CTTIC、他)に合格した認定翻訳者である必要がある。ところが、日本には翻訳に資格、あるいは認定の制度がないので、翻訳に対してこれらの諸国が期待する基準と整合性がなく困るのである。

また、翻訳者は翻訳者として商品になるものを書けるようになるまでかなりのトレーニングを要するのであるが、このような認定制度があれば商品になるものを書けるようになるまでのトレーニング期間をインターンとして十分な経験を積むことも容易になるように思われる。

日本の当局には翻訳に免許、その他認定の制度が必要だと考えているふしはない。翻訳の正確性、客観性をあまり重視していないようだ。英語から日本語への翻訳の場合であるが、日本に提出する日本語以外の公文書は日本語の翻訳が必要な場合には翻訳を自分でしてもよい、という変な状況である。翻訳者に国家の認定する資格がない以上誰が翻訳をしてもかまわず、すなわち自分でしてもいい、という論理である。書類を提出する人にはフレキシブルで好ましい決まりかもしれないが、翻訳内容に客観性が失われることは明白である。

もし、翻訳者の認定の制度が進むとすると、日本翻訳者協会、あるいは日本翻訳連盟などいずれかの職業協会が主導して認定試験、認定基準などを策定、実施し、管轄官庁がその認定に国としてお墨付きを与えるという形になるのが理想的だと思えるが、実現するとしてもはるかかなた先のことだろう。また、導入の仕方によっては、例えば官僚主導の制度が導入されて、一般教養試験とか翻訳業務と何の関係もない試験科目が重視されるとか、元外務省OBは試験免除で認定することにより公務員の退官後の職業ランディング先に利用されるとか、そんなことになっては自由を愛する翻訳者には住み心地が悪くなる。

公文書の翻訳がスムーズにできるような環境がより整備されるよう願いたい。

永江俊一



スポンサーサイト

テーマ : ビジネス - ジャンル : ビジネス

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

translators

Author:translators
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
Google+
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。