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借地権の英訳

借地権英訳
去年の秋、リーマンショックが起こるまでは日本の不動産は結構人気でした。それで不動産の鑑定評価書の英訳依頼がかなりあったのですが、今年に入ってからは急激に不調になりました。

それで不動産の用語の翻訳については近頃少し遠のいていたのですが、契約書がらみで「借地権」の翻訳の必要がでてきましたので、さてどの訳をあてるものか、という話です。

借地権は借地借家法という法律に規定される権利なのですが、残念ながら借地借家法の翻訳がまだ内閣官房庁から公表されていません。それで、次に権威があると思われるのが不動産鑑定評価基準ですが、これの財団法人日本不動産研究所編著(住宅新報社)の英訳によると、

(鑑定評価基準)
借地権とは、借地借家法(廃止前の借地法を含む。)に基づく借地権(建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)をいう。

(日本不動産研究所編著による英訳)
A leasehold interest in land refers to the interest of the tenant or lessee who holds a ground lease. Ground leases are typically held by the owners of the buildings that occupy leased sites and are classified into two types: the right to be granted by regular ground lease (chinshakuken) which are usually not registered and the right of superficies (chijoken) which are usually registered. Leasehold interests are defined in the Land Lease and Building Lease Law.

まず、日本語の原文に比べて英文のほうがかなり長くなっているのに少し戸惑ってしまいます。日本語の原文では「借地権」と「地上権」、「賃借権」という3つの用語があるのに対して、英文のほうには、a leasehold interest in land、a ground lease、ground leases、regular ground lease、right of superficies、leashold interestsと多様な表現がでています。regular ground leaseが賃借権、right of superficiesが地上権に疑いはないのですが、肝心の借地権は何なのかが少し不明です。Leasehold interests in landも借地権の意味で使用されているようであり、またground leasesも訳としては借地権が来るべきところに使用されており、単にleasehold interestsも日本語との対比では借地権の意味で使用されているようにも見えます。

「借地権」という字面からは(地という文字がはいっているので)ground leaseとしたいように思いますが、これは賃借権のregular gorund leaseと重なるようにも思えますので、避けたいところです。そうすると、leasehold interest in landとなります。難点として4つの単語になりかなり長いですが、借地借家法の翻訳がでてはっきり定義されるまで暫定的に翻訳のサムライでは借地権はleasehold interest in landとあてることにします。

翻訳でよくつきあたる問題ですが、法律などで規定される用語などは特に、全く同じ概念の英語が存在しないということがあり翻訳に苦労することになります。

日本の法律の概念では物に対する権利である物権(real rights)と人に対する請求権である債権(claims)とがあります。物権は物に対する権利なので絶対性があり、この権利は譲渡することもでき、第3者に対しても主張することができます(妨害排除権など第3者に対する物権的請求権)。対して債権は相対的で、契約当事者間の相手方に対する請求権にすぎず、したがって原則的に相手方以外の者には効果がなく、よって相手方の同意なく第3者に権利を譲渡することはできません。土地の使用する権利についていえば、物権である地上権(right of superficies)は土地の所有者の同意を要さず処分(譲渡など)することができ、また土地の所有者すなわち地上権設定者に対して登記請求権もありますので、地上権者が希望する限り必ず土地登記簿に地上権を登記することができます。これに対して債権である賃借権(regular ground lease、上記対訳によるとregularが入っていますが、regularは不要かもしれません)は土地所有者すなわち賃借権設定者に対する請求権なので、相手方の同意なく賃借権を譲渡することはできません。借地借家法により賃借権に対抗力があれば(登記など)物権同様相手方の同意なく譲渡できることになっていますが、そもそも登記請求権がないので賃借権の登記に協力してくれる土地所有者はほとんどいないのが現実です(ただし、法により土地の賃借権については一定の条件を満たせば登記がなくても対抗力を備えることができます)。

上記のような根源的な違いはありますが、両者とも他人の所有する土地を使用させてもらう権利という意味で類似しており、また債権である賃借権についても借地人の生活を守るという配慮から借地借家法でいろいろな修正を加えて借地人の権利を強化し、既述のように多くの点で物権と同様の権利を付与している(賃借権の物権化)ので、借地借家法、鑑定評価基準などではこの2つをまとめて「借地権」としてくくって一つの新たな用語を当てて使用しているわけです。

というわけで、借地権には評価基準の英訳によるとground leaseとleasehold interest in landと2つの可能性がうかがえますが、賃借権との区別の観点からleasehold interest in landの方が無難と判断して翻訳のサムライではこれを採用するというのが結論です。

永江俊一
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