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合同会社の「職務執行者」の英訳

合同会社の「職務執行者」の翻訳

会社の役員の肩書の翻訳は簡単なようで少しやっかいです。やっかいな問題点のひとつは、肩書というのはけっこう個人的な思い入れが強く、例えば契約書を訳すときに、契約書の末尾にたいていは署名者として「代表取締役」の肩書があり、それを「Representative Director」と訳すと、多くの場合に翻訳の依頼を受けた会社の担当者の方から、いや、それは違う、Chief Executive Officer です、とかPresident です、変えてくださいとかの注文が出てくることが多い。もちろん、依頼者がそう指定すれば、それに従うことにことさらに問題はないのですが、少しやっかいなのが、それは必ずしも正しくないので、翻訳品にそういう誤った修正を入れ込んでくる担当者が個人的に注文をしているだけのことで必ずしも会社の意思でない可能性もあり、ちがうのだけれどもなあ、ほんとうに組織としての会社の意思なのかなあ、書き換えていいのかなーと困った仕儀となることがあります
代表取締役は、法律(主に会社法)で規定されている職位(Statutory title)なので、株式会社で代表取締役として契約書に署名している場合に代表取締役の肩書はRepresentative Director でほぼ疑いのないことで、これをChief Executive Officer と置き換えることにはほとんど意味がない。契約書の読者にとっては契約書の署名者として会社の代表権がある会社法に定めている代表取締役が署名しているという事実が関心事なのであって、会社法に定めのない、したがって会社を代表する権限があるかどうかが外部者にとっては客観的に不明である会社内の肩書を書き入れることには理がないからです。

さて、本日の話題はしかし代表取締役の英訳ではなく、「職務執行者」の翻訳です。

職務執行者も契約書の署名者にひんぱんに出てくる肩書ですが、これに対応する英語訳は定訳が必ずしも定まっていない。

外国の会社が日本に子会社を作る場合に合同会社は非常に便利な企業形態のようで、多くの大手の外国企業が日本子会社を合同会社で設立しています。この場合、代表社員は外国の企業になるわけですが、会社法には合同会社の設立時の登記事項として次のような規定があります。会社法第914条8号

合同会社を代表する社員が法人であるときは、当該社員の職務を行うべき者の氏名及び住所
(viii) if the member representing the Limited Liability Company is a juridical person, the name and address of the person who is to perform the duties of such member

職務執行者は、この企業である代表社員に代わって代表社員の職務を行う者を指す職位ですから、このthe person who is to perform the duties of such memberというフレーズを名詞にすれば、the person performing the duties、パーソンというのは当人または日本企業の職員にとっては心理的に少し異議があるところだと考えるので、このポジションの重要性を鑑みてofficer にして、Officer Performing Duties が会社法で定めるこの職位の表現に最も忠実で一番はまると私は思うのですがいかがでしょうか。(残念ながら、この訳出についても、代表取締役の英語訳同様、多くの場合、もっと偉げな名称に変えるように言われることが多いのですけれども)

(合同会社の)職務執行者= Officer Performing Duties
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