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地上権と土地の賃借権

地上権と土地の賃借権



地上権賃借権そして借地権翻訳(英訳)

不動産の翻訳においては、所有権以外の権利については様々な権利があるので、正確に訳すことが求められますが、これは意外と難しいです。なぜなら、土地の権利形態はどこの国も昔々からの習慣、各国の制定法の違いなどがからんで、全世界で共通の全く同じ権利ということがないからです。

それでも所有権については(比較的)容易です。ただし、それでも少しややこしい部分があり、ひとつに日本では土地と建物に別々の所有権が発生しますので、土地と建物を一体の不動産としてとらえる他国の人が日本の文章の翻訳文を読むと理解しにくい部分があるかと思います。更地の場合は、このような建物の所有権のファクターが入ってこないので、わりと単純明快で、更地(vacant land)に対する完全な所有権はfreehold又はfee simpleとするのが一般的のようです。freeholdは英国系、fee simpleは米国系といった傾向でしょうか。

さて、借地権ですが、これはひとことでいえば、正解は「ありません」。

借地借家法(Land and Building Lease Act)の第1章の第2条に定義として次のような条文があります。

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる :
一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。

つまり、人の所有する土地を使用する権利には地上権と土地の賃借権があり、この2つの権利を含んで借地権と呼んでいます。

この条文は法務省の日本法令外国語訳データベースシステムの英語訳によると、

"Land Lease Right" shall mean superficies or the right to lease land for the purpose of building ownership;

地上権がsuperficiesであることには何らの疑いがありません。(地上権は物権rights in remです)

ところが、上の条文を比較すると、
借地権はLand Lease Rightで、賃借権はthe right to lease landとなっていますが、これは違う用語といえるまで区別化されているかといえば少し疑問です。Land lease rightとright to lease landでは単語の順番を入れ替えただけのようにも思えます。

2、3年前に同データベースシステムの借地借家法の訳と借地権と賃借権の訳について当ブログで触れたことがあり、そのときにあった様々な英文の用語のバリエーションはまとめられて上記のように1、2個に収束はされたようです。しかし借地権と賃借権の区別については翻訳者にとっては未だ解決されたとはいえません。

同じ法律の第14条には下記のような条文がありますが、この場合、賃借権はlease rightとなっています。借地権が定義でland lease rightと定義されていましたので、借地権と混同が起こっているようにも見えます。

第十四条 第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。

Article 14 In cases where a third party has acquired the buildings and other items on the land that is the object of the lease right that the Land Lease Right Holder has attached to the land by title, and the Lessor does not consent to the transfer of the lease right or to a sublease, the third party may request that the Lessor purchase the buildings and other items that the Land Lease Right Holder has attached to the land by title at the prevailing market price.

(引用:法務省の日本法令外国語訳データベースシステム「借地借家法」)

ところで、この条文はなぜ地上権と土地の賃借権とを明確に区別しなければならないかという理由のひとつとして良い例だと思いますが、この条文では借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、とありますが、借地権設定者が地上権を設定している場合は、地上権の譲渡又は転貸の承諾をしないとき、という状況は考える必要がありません。地上権者はこのような承諾を一切必要とせずに権利として地上権を譲渡することができるからです。

物権(rights in rem又はreal rights)である借地権を地上権といい、これの英語訳はsuperficiesという定訳が存在していますが、債権(rights in personum又はclaims)である土地の賃借権については、つまり定訳がない、ということになります。借地権としてleaseholdという英語はよく表れますが、これを借地権に使用すべきか、土地の賃借権に用いるべきかは不明です。

日本の土地の権利体系をよく知らない読者の方のために説明を加えますと、地上権は物権として土地に対する絶対的な権利であるのに対して、賃借権はあくまでも土地所有者という人に対する債権であり、権利として地上権ほどの絶対性がありません(すくなくとも理論上)。法律上の権利として地上権と賃借権は全く別物で、従って、権利の内容として、地上権と賃借権をはっきり区別するのは当然であるとともに、賃借権と(地上権をも含めた)借地権もはっきりと区別すべきですが、ところが今のところこれをはっきりと区別した英語の用語を確認していません。

というわけで、借地権と賃借権の英語訳ですが、これはまだ完全な正解は「ありません」。land lease right、right to lease land、lease rightなどが借地権と賃借権の双方にぼやっと使用されている状態に見受けられます。この他に日本法令以外の英文の文章では前述のようにleaseholdなどもよく見受けます。法務省の同日本法令外国語訳による不動産登記法では賃借権はright of leaseとなっています。

現状では不動産の土地の借地権に関する文書について、借地権と賃借権が登場する場合は暫定的に以上にでてきたような英語の用語を適時適当に分けて使用するしかないかなと思います。

もし信頼できる文書の中で借地権と(土地の)賃借権がはっきりと区別された文書を発見した方は、ぜひ教えてください。

筆責:永江俊一
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テーマ : 翻訳 - ジャンル : ビジネス

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