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発行可能株式総数

発行可能株式総数の翻訳英訳

会社の定款、登記簿その他に発行可能株式総数という用語が多発しますが、これをシェアーズポッシブルトゥービーイッシュードとか字面の直訳をしてはいけません。

私は最初に法人を設立した時には有限会社(Yugen Kaisha)で設立しました(1,999年です)。現在は合同会社(Godo Kaisha又はLimited Liability Company, or LLC)という形態がありますが、当時は株式会社よりも簡易な形態の会社としては有限会社というのがありました。有限会社は株式会社の要求事項を少し簡易化したもので、例えば資本の要件でいえば、株式会社(stock company)の資本金capital stock 又は stated capital)は最低1,000万円、有限会社は最低300万円でした。なお、会社の持ち分所有者は株式会社の場合は株主shareholder)、有限会社の場合は社員member)です。その後会社法が数回修正され、有限会社はなくなりました。私が設立した会社(マイヤージャパン有限会社)のように既にある有限会社は、例外としてそのまま存続させるか、希望により株式会社に組織変更することができることになりました。私はそのまま有限会社の組織を継続させるとともに、新たに株式会社を立ち上げ(翻訳のサムライ株式会社)、新しい会社法に対応しました。

そのときに、既存の有限会社の履歴事項(登記事項)には職権により若干の追加が加えられましたが、そのひとつが、「発行可能株式総数」の追加です。有限会社であっても、株式会社と同様の登記事項項目が課されたわけです。

発行可能株式総数(total number of authorized shares)とは、株式会社が発行することを授権された株式数のことです。株式会社の株式の数については、3つほど頻出する用語(term)がありますので、整理してみます。

1. authorized shares
2. issued shares
3. outstanding shares

まず1番目のauthorized shares は発行可能株式総数のことで、授権株式ともいいますが、当該会社が発行できる株式総数のことです。発行できるというのは具体的には定款を変更することなく取締役会の決議で増資できるということです。総会の決議は必要ありません。

2番目のissued sharesは発行済株式数のことで、これは当然1番の発行可能株式総数未満の数で、会社がすでに発行をした株式数です。例えば、授権株式が1万株で、発行済株式数が6,000株の場合、この会社はまだあと4,000株(取締役会の決議を経て)株式を発行することができます。

さて、3番目のoutstanding shares は、上場会社の場合などによく目にする用語ですが、発行済株式のうち、当該会社が所有する自己株式(treasury shares、金庫株と呼ばれることもあります)を引いた株式数をいいます。普通は日本語ではこれも発行済株式です。かつて日本では自己株式の取得を制限されていましたので、issued sharesとoutstanding sharesとの差異は実質上ほとんどなかったという事情があり特に区別する必要が実際上なかったのかもしれません。

発行済み株式といっても上記のように2つの違う意味を指すことが可能なので、厳格に区別するにはoutstanding sharesは自己株式を除く発行済株式というべきでしょうが、この表現は英語を和訳したものを除き、実際にはあまり見たことがありません。コンテクストで判断しろよ、ということかもしれません。

さて、話は既存の有限会社に職権で追加された登記事項の話に戻りますが、それまで(旧会社法の下では)株式会社は発行可能株式総数を定めなければならず、発行可能株式総数は発行済み株式数の3倍を超えることができませんでした。それに対して有限会社はこれらの要件がなく、従って発行可能株式数は普通定めていませんでした。

ところが、会社法の改正により有限会社が廃止された時点で、既存有限会社も発行可能株式数を登記しなければならなくなったようで、職権で記載されました。その金額は、既存の発行済株式数がその会社の発行可能株式総数とされました。つまり、既存有限会社は増資をする場合は、まずは定款の変更をして発行可能株式数を増加させる登記の変更申請をしなければなりません。

発行可能株式authorized shares
授権株式authorized shares
発行済株式issued shares
発行済株式outstanding shares (但し、自己株式を控除した株式数)

筆責:永江俊一
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ラブレターの翻訳

ラブレター翻訳

小さい子供のころから学校を卒業するころまでの間生活した国の言葉を母国語(mother tongue)などと呼び、母国語を話す人をネーティブ(native)などといいます。例えば私は日本語ネーティブです。

言葉は母国語以外の外国語、第2外国語と学び習得することができますが、一般的にいって、一番得意な言葉は圧倒的に母国語であるのが普通です。かなりの学習量を積んでも自分の母国語以外の言語(second language)は母国語ほどの運用力を備えることは至難の業といわれています。

そこで、2か国語のかなり流暢な知識を必要とする翻訳については、訳出する元の言語(source language)と訳出する先の言語(target language)のいずれを母国語とするのが有利か、という問題があります。つまり、例えば日本語ネーティブである私は、日本語から英語に翻訳する英訳をするのが効果的か、英語から日本語に翻訳をする和訳をするのが効果的か、という問題です。また、翻訳において、元の言語(source language)の正しい理解をするのがより重要であるか、先の言語(target language)を流暢な表現にするのがより重要であるか、という問題でもあります。もちろん、元の言語の正確な理解と先の言語の流暢な表現ともに重要であることに間違いはないのですが、現実的には上述のようにほとんど必ず一方の言語の方が他方の言語に比べて圧倒的に運用能力が高いという真理を受け入れた場合に、どちらを取るか、という2者択一の問題です。

翻訳一般でいうと、私は、理想的には元の言語(source language)に自分の得意な言語すなわち母国語を使用すべきと思います。というのは、翻訳は決して安い代物ではないので、翻訳をするほどの文書は非常に難解なことが普通です。母国語で読んでもしばしば理解ができないような文書を外国語で読めば、読み違いが起こる確率が非常に高くなります。読み違えて読んだ原稿を翻訳したものはもはやそれは翻訳ではなく、「作文」になります。実際のところ、世の中にはこうして生まれた誤訳があふれています。

source languageの理解不足のための翻訳の瑕疵が恐ろしいのは、翻訳者本人が瑕疵があることに気づいていないことにあります。

翻訳一般でいうと、と申しましたが、実は翻訳をする文書は千差万別で、ひとくくりにできません。文書により、原文の内容の情報を細大もらさず翻訳することが重要である文書と、逆に原文の内容と訳出された言語との情報の些細な整合性よりも、むしろ読みやすさの方が大切な書類もあります。

前置きが長くなりましたが、ラブレターの翻訳はどちらかといえば後者に入る部類の文書です。
もちろんラブレターを書いた人の気持ち、伝えたいこと、情熱、それらのことを十分に理解することは必要不可欠ですが、ラブレターの理解はそれほど難しい内容であることはあまりありません。ラブレターにはあまり難しいことを書かないところがいいという側面もありますので、人が読んでも理解できないような文章でラブレターを出す人はいないでしょう。

そういう訳で、ラブレターの翻訳はどちらかといえば「詩(poem)」の訳のようなものですので、訳出言語に精通した翻訳者が書いた方が効果的です。つまり英語のラブレターlove letter)を和訳する場合は日本語ネーティブの翻訳者が適していて、日本語のラブレターを英語に英訳する場合は英語ネーティブの翻訳者が適しています。翻訳する側の生産性という面から言っても、母国語を書くスピードの方が圧倒的に早いのが普通なので、この方向の翻訳の方がたくさんの分量翻訳ができ、翻訳者の収益性、生産性という面からも良好です。

仮に元の文章と少しはずれていたとしても、その翻訳がもっと気持ちが伝わるようなきれいなラブレターであれば、結果よし、ですよね。

永江

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裁判判決の翻訳

裁判所の判決の翻訳

結婚というのはひとりの個人とひとりの個人との間の問題で、基本的には当事者間だけの問題であると思いますから、それを解消する場合の離婚(divorce)についても裁判所とかにはそぐわないような気がいたしますが、国によっては、裁判所の決定がなければ離婚が認められない国もあるようです。宗教の結婚観の問題もからむのかもしれません。

日本では協議離婚というのが主流のようで、協議離婚の場合は公証役場で協議書を認証してもらうとか、調停による離婚の場合は調停調書、まとまらない場合は裁判の判決を仰ぐということになるようです。翻訳に絡んでくる離婚といえば、離婚が成立した文書の翻訳ということになるせいか、多くは協議離婚にからむ書類となっているようです。日本では離婚の裁判は法廷に持ち込む前に調停などで話をまとめる努力を求められるので、基本的には当事者間で解決してください、という姿勢だと思います。

和解の合意書、協議書その他裁判の判決以外の文書も含めて翻訳を依頼される案件としては離婚がらみの他、故人(decedent)の財産の分与(division of property)などの件も多いです。

判決の翻訳の対象文書の中には「確定判決」という文言がよくでてきます。例えば確定判決の日、とか。裁判は日本をはじめ3審制度などがあり、下級裁判所の場合は判決が出ても控訴又は上告をまって判決がまだ確定したわけではないので、判決が最終的に確定する日は判決が出された日から一定の日が経過した日になります。判決が確定した判決は最終で拘束力を持つようになるので、翻訳のスペースが十分にあれば「final and binding judgment」などと書けるのでしょうが、普通はスペースが限られているので(漢字ではわずか4文字のスペース)、たいていは「final judgment」と書くのがやっとです。



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減価償却費の翻訳

減価償却費翻訳

会計(accounting)の勘定科目(account item)は、前に述べたことがありますが、なかなか直訳がきかないところです。但し、現在は金融庁が勘定科目の日英対比のデータベース(確か、タクソノミとか書いてありました。興味のある方はオリジナルのURLを訪問して確認してください)があり、(この資料の中に含まれていない一部の勘定科目を除いて)日本の財務諸表などの中の勘定科目を英語に翻訳する時に定訳で困る、という苦労はほとんどありません。

会計はそれぞれの国の一般に認められた会計原則(generally accepted accounting principles=GAAP)又は会計基準(accounting standards)に従うのが常であり、各国の会計基準は(経済の国際化の影響などもあり、国際的な統一化をはかろうとする努力は各国でしていますが)微妙に異なるところがあるのは当然です。

ここでは減価償却費の翻訳(英訳)の話題です。建物や付属の構造物あるいは工場の設備など、多額の資金で一気に購入する設備などであっても効果が多年に亘って及ぶものは、その購入の年度に費用として全額計上してしまうと、非常な負担になってその年度の業績に悪い影響を与えてしまうので、設備投資を促進する上で障害になるので、という経営政策的な理由や、また効果という意味でも設備は多年にわたって生産に貢献するのに購入年度に全額費用に計上したのでは実情とは乖離してしまうという実際的な理由などから、有形固定資産の多くは経済的使用年度に亘って費用を按分するのが習わしです。これを減価償却費(depreciation)といいます。

また、このような設備投資など物理的に数年に亘って会社に存続し実際的な経済的効果を及ぼす資産に加えて、例えば、会社を買収した時ののれん(good will)、新商品開発のための開発費(development expenditures)、開業の時の開業費(opening expenses)など一定の費用については、多額の一括の支払いをすでに済ませており、換金性がある物理的な資産ではないにも関わらず、将来数年にわたり効果が及ぶなどの理由で資産化(capitalisation)することができ、この場合、これらの資産は日本語では繰延資産(deferred assets)と呼ばれます。英語ではこれら繰延資産など無形固定資産(intangible fixed assets)を多年度に亘って費用化することをamortisationと呼びdepreciationと用語上区別していますが、日本語では減価償却費以外の言葉が特にありません。いずれも減価償却費と呼んでいるようです。概念的に繰延資産の費用化は「減価」ではないので減価償却、というのは用語の意味的に変だと思うのですけれど。でも調べた限りでは資産化された繰延資産の各年の費用は減価償却となっています。

そこで、日本語から英語への翻訳の場合、減価償却費はその減価させる資産の内容が分かっておりどちらかに明らかに属している場合は、その償却される資産により、英語ではdepreciation 又は amortisation に分けることになります。日本語の減価償却費が両方を含んでいる場合、あるいは文脈からはっきりとどういう資産の償却を指しているかが不明の場合は、depreciationでくくってしまうか、depreciation or amortisationと2つの用語を併記するようなややこしいことになります。


筆責:永江俊一

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履歴事項全部証明書の翻訳その2

履歴事項全部証明書の登記官の認証文英語

履歴事項全部証明書の翻訳で記載される項目、事項は先日のブログ記事に書きましたが、この書類の重要性は公文書であること、すなわち公務員(登記官)の認証文と公印が付されていることですので、以下に記す最後の文言は非常に重要です。

また、履歴事項全部証明書と同じような書類として現在事項全部証明書、閉鎖事項全部証明書(またそれぞれに一部事項証明書という書類があります)などがあるわけですが、それらとの差異は必ずしも分かりやすくはない文書名の他は、この文言となりますから、履歴事項全部証明書の英語への翻訳では重要な部分です。↓

「これは登記簿に記録されている閉鎖されていない事項の全部であることを証明した書面である。」

この中で「閉鎖されていない事項の全部」というのはどう訳したらいいでしょうか、というのが本日の話題です。

閉鎖」というのは、closeでよいでしょう。戸籍謄本の方(全部事項証明書)では「除く」という表現が使用されており、これは「remove」でいいと思いますが、登記簿での記録の閉鎖と戸籍謄本の記録の「除籍」とは記録を移す原因も違っており、異なった事務であるので(それ故日本語も異なっているので)、素直に閉鎖はcloseとすべきと思います。

履歴事項の中の記録の閉鎖は典型的には抹消された事項のうちざっくりいうと3年を超えたものが「閉鎖」されます。別のカテゴリーの記録に移される訳です。記録をcloseするというのは英語的に変だ、と主張される方もいらっしゃるかもしれませんが、しかし、これは定義されたお役所言葉ですから、一般的に使用される語感と異なっていてもなんら支障ありません。もともとの日本語自体、事項を閉鎖するというのは少し変なんですから。

閉鎖されていない事項の全部、といういいまわしはいろいろ可能でしょうが、私が多用するのは
all matters except for those that have been closed
です。事項は、mattersがベストと思いますが、他にitemsとかparticularsとかでも可でしょう。

閉鎖されていない、というのをまわりくどくexcept for those that have been closed といういいまわしにするのは、文脈をくんだもので、履歴事項全部証明書は閉鎖された記録以外は全て記載しているということ、つまり「全て」が強調されているので、all except forが分かりやすいと思っています。

まとめると、
閉鎖されていない事項の全部英語all matters except for those that have been closed

筆責:永江俊一
翻訳のサムライ

PS: 履歴事項全部証明書翻訳ミニサイト

履歴事項全部証明書の翻訳

履歴事項全部証明書の翻訳

私は古いラジオが好きで、3台持っていて、ときどき聞いています。1台はコロンビア、もう1台はクライスラーというラジオで、そしてもう1台大型のラジオがナショナルです。3台とも真空管のラジオで、ナショナルのラジオは1957年製となっていますが、他の2台はもっと古いようです。

私は自分では持っていませんが、トヨタのラジオというのもあります。戦争のあと軍事関連の製品の製造が制限された時期がありましたので、トヨタはラジオを作ってしのいでいたということのようです。

私の持っているナショナルのラジオが製造されていた1957年頃は、日本は世界中のラジオの大きなシェアを占めていたのではないでしょうか。戦争でさんざんに国土が疲弊したあと、日本が急速に復興できたことにはラジオなどの工業製品の製造と輸出が大きな役割を果たしていたことは想像に難くありません。

日本が世界で大いにラジオを販売する前には、アメリカが世界のラジオの生産基地だったようです。つまり、ラジオはアメリカから、日本、そして韓国、中国などに生産の場が移り、遂には製品自体が陳腐化した(obsoleteになった)訳です。

さて、どうしてラジオの話をしたかといいますと、このように工業製品が生まれ、競争力のある国がその製品を作っているうちに新興の国に対して競争力を失い、別の製品に移行し、そしてついにはいかなる工業製品についてももう製造業自体競争力を失ってしまうという摂理を示した典型的な例のひとつではないかと思ったからです。

産業の空洞化、ということがいわれますが、日本では昔中小企業の工場が立ち並んでいろいろな部品や製品を作っていたところが、廃業したものかマンションなどの立ち並ぶ住宅地帯に変貌している地域がたくさん見受けられます。日本では工場を日本から中国、マレーシア、その他のアジア地域などに移す傾向が加速しているようです。

海外で子会社の工場を作るために海外子会社を設立するときには、相手国の法務局などに書類申請をすることが必要になってきますが、そのときに求められる書類のひとつ(ふたつ)が会社の定款や履歴事項全部証明書などです。履歴事項全部証明書などの翻訳は以前から多く依頼される書類でしたが、最近とみに増えたように思います。提出先を聞くと大抵はアジアの国なので、このような状況を表しているのかなと感じます。(なお、現在事項全部証明書の翻訳を依頼されることもありますが、履歴事項全部証明書の翻訳に比べると現在事項全部証明書の翻訳の依頼頻度ははるかに少ないです)

アメリカその他の国では会社の存続証明書といいますか、Certificate of Good Standing なる書類がありますが、日本ではそういう書類は発行してくれないので、会社の証明として履歴事項全部証明書などとその翻訳を提出することになります。(ちなみに登記簿というのは昔式の書類のときに使用されていた名称で、いわゆる登記簿といった場合現在の書類の形式では履歴事項全部証明書を指すものと思われます)

履歴事項全部証明書には会社の登記に必要な項目(particulars)が網羅されており、例えば、商号(つまり会社名です)、本店の住所、支店の住所、資本金(stated capital 又はcapital stock)、授権株式数(authorized shares)、発行済株式数(issued shares)、役員に関する事項(officers、つまりdirectorsとcompany auditors。日本には秘書役company secretaryの役職はありません)、会社の組織(organ)、などが記載されています。海外の法務局等諸官庁に提出する場合、原文が日本文のものはそれに英語などの翻訳を添えることを要求されるのが普通です。

履歴事項全部証明書は上記のような事実事項が淡々と列記されただけの書類なので、翻訳としてはあまり面白みのない書類といえますが、少しおもしろいのは、役員、社員などにストックオプションを提供している会社では、新株予約権(share option)の記述があり、これは難解ではあるけれども翻訳は楽しいです。

新株予約権の翻訳は、以前は直訳的にnew share reservation rightsとかnew share acquisition rightsと訳されたり、また意訳としてこれに類似するshare warrantsとも言及されていましたが(そしてまた会社法の変わるそれ以前に新株予約権が新株引受権であった頃はnew share subscription rightsとも言及されていたようです)、今では新株予約権英語訳はshare options でほぼ定着しています。アメリカ英語ではshareをstockと呼ぶことが多いので、stock optionsということもあります。

筆責:永江俊一
翻訳のサムライ

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ウェブページの翻訳

ウェブページ翻訳

ウェブページ(web page)というのは、日本語ではホームページ(home page)ということもあります。最近ではウェブページでもとおるようになってきたので、和訳をする時に英文にweb page とあったらそのままウェブページと訳すようになりましたが、少し前までは、web pageは日本語にする時には必ずホームページと置き換えていました。その頃は英語でhome pageとあると、日本語ではトップページなどと書き変えていたと思います。この言葉に限らず、英語とカタカナでは意味が食い違っているということも結構多いので、このような用語はうっかりそのままの音をカタカナにすると意味が変わってしまい、翻訳者泣かせの単語といえます。

翻訳会社には毎日いろいろな文書の翻訳について問い合わせがあるわけですが、翻訳は例え翻訳にかかる文書の分量が少ないとしても、文書はそれぞれユニークなので、個別に請負契約をしてする役務の提供のような側面があり、最初はお客さんからの「見積依頼」というプロセスから始まります。

翻訳会社も長く運営をしていると、膨大な数の見積を処理することになり、見積りを受けた時にその個別の見積依頼を読めば、受注しそうな案件か、全く受注の見込のない案件か、一目でわかるようになります。全く見込のない案件というのは、またえてして、見積するのに手間がかかる種類の文書(例えば、ワードなどのデータでなく、読みにくいクオリティのファックスコピーなど)であることが多いのです。ひとことでいうと、見積するだけ時間の無駄と分かり切った案件がたくさん舞い込んできます。

翻訳料というのは、翻訳する分量がどれくらいあるか、というのが大きな決め手になるので、見積をするうえでまずこれを知る必要があります。見積するためにはまず翻訳対象の文書の分量、すなわち、(日英の場合なら)文字数、(英日訳の場合なら)単語数を数えます。この翻訳対象の文書の文字数又は単語数を計測するというのは送られてきた原稿の媒体の種類により、非常に簡単にできるものもあれば、時間がかかるものもあります。見積料というのは翻訳の世界では普通チャージできないので、問い合わせの案件について、見積をするために使用する時間は受注にならない場合は翻訳会社としては全て無駄に費消した費用、ということになります。

そのような意味で、最も困る問い合わせのひとつが、ウェブページ翻訳です。

典型的な問い合わせのスタイルとしては、「(URLを送ってきたうえで)下記のURLのホームページを翻訳した時の見積をお願いします」ときます。ホームページのページ数は莫大になることが多く、リンクをたどるだけでは全てのページを閲覧するのは結構大変です。また、ホームページのサーバーからファイルを全てダウンロードしてくるソフトウェアもあるのですが、それを用いてダウンロードするのにももちろん工数がかかります。

ウェブページは外注で作成(及び/又は管理)している会社が多いので、このような見積依頼の大部分はそのウェブを所有している会社そのものではなく、ウェブ製作/開発会社であることが多くなります。この場合、ウェブ制作会社では翻訳の「品質」(すなわちオリジナルの日本語ウェブページの内容を的確に、オーディエンスすなわち英語ネーテイブなどに読みやすい英文で表現しているか)の判定をする機能、能力がないのが常なので、また制作会社自体が最終のクライアントから定められた予算で英語版のウェブページを作成するという仕事を請け負っているので、翻訳会社に翻訳を発注する部分は「コスト」でしかなく、1円でも安いソースから、というメカニズムが働くのは容易に想像できます。

実際、日本のウェブページで英語版のウェブページを持っているところの英語はひどい状態であるところが多いのが現実です。2流の翻訳者/翻訳会社に発注した当然の結果です。

翻訳者仲間の話の中で、英語がネーティブである日英の翻訳者が好んで語る議論があります。このようなとても読むに堪えないような英語版のホームページが氾濫していることを理由にして、「(このようなとても読めないような英語訳をやっているのは日本人の日英翻訳者に違いない:発言者の勝手な推定)なのだから日英の翻訳(日本語の原稿文書を英語に翻訳するいわゆる英訳です)は、英語ネーティブの翻訳者しかやるべきでない」という主張です。

これは、先に私が述べたようなウェブ翻訳に独特な事情を知らないための誤った議論であって、ウェブページの英語訳にひどいものが多いのは、ウェブページの翻訳は極端な安物買いをしているサイトが多いという理由です。1文字数円という機械翻訳と変わらない値段で発注すれば、機械翻訳の出力とよけい変わらないようなものを買っているのは当然の結果です。

少し話がそれてしまいましたが、要するに、ウェブページの翻訳の見積依頼は、見積りの作業はけっこう時間を食うけれどもサムライでは絶対に受注にならないということが分かり切ったコストだけがかかるやるだけ無駄な仕事です。ウェブページの見積依頼はなんとか失礼をせずにお断りする算段がないかと頭を悩ませています(但し、ウェブページの翻訳でも、ウェブサイトを所有する会社自体からの見積依頼は翻訳品質が考慮要因に入ってくるので受注になる可能性があります。またまれに翻訳が高い見積でも発注する品質重視の開発業者もまれに存在します)

ウェブの翻訳についてはひどいものが多いというのは日本だけに限った現象ではなく、例えばイギリスの英語サイトの逆に日本語版のページでしたが、ホテルのウェブサイトですが、「当ホテルは3流ホテルです」と自慢していました。もちろんthree star「3つ星」ホテルの誤訳です。どのレベルの翻訳者/翻訳者がやったか、というと、それは1単語5円とかのレベルでしょう。まさか3つ星ホテル自身がそんな値段でまともなものができると思ったとは思えませんが、このウェブの和訳を請け負ったウェブ会社は一番安いコントラクターを使った、というだけのことだと思います。

ウェブの翻訳の見積りは絶対したくない!というのが本音です。

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