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登記事項証明書と登記簿謄本・登記簿抄本

履歴事項全部証明書と登記簿謄本

海外支店の設置などで、履歴事項全部証明書の翻訳を依頼される会社が多いです。この場合、履歴事項全部証明書という書類名で問い合わせをされる方ももちろんいらっしゃいますが、おそらくより多くの場合は「登記簿」又は「会社登記簿」と呼ばれる方が多いのではないかと感じます。

会社登記簿はコンピュータ化される前に呼称されていた書類で、現在これに相当する書類はコンピュータ化され、登記事項証明書となっていますが、今でも会社登記簿という呼び名は非常に流通していますし、また書類の内容についてよりディスクリプティブな名称であると感じます。それで、未だに多くの人が登記事項証明書を登記簿と呼ぶ結果となっているのではないかと思います。

さて、これら登記簿等の英語名が本日の話題です。

まず、会社登記簿については、company register 又はcompany registryが通りがよいと思います。抄本についてはabridged とか、abstract とかを足せばいいでしょう。

一方、コンピュータ化した後の「登記事項証明書」はword to wordに翻訳してCertificate of Registered Mattersでいいでしょう。登記事項証明書のうち商業登記に関するものには「履歴事項全部証明書」、「現在事項全部証明書」、閉鎖事項全部証明書などがあります。翻訳で一番良く使用されるのが、履歴事項全部証明書で、これはコンピュータ化されるまえの会社の登記簿謄本に相当します。なお、閉鎖事項closed mattersでいいかと思います。

多くの証明書翻訳ではword to word の翻訳が要求されているので、この書類名についてもなるべく原意に近い言葉を選んで原文に忠実に英訳すべきですが、私はCertificate of Complete Historical Recordsとすることが多いです。同様の書類に履歴事項一部証明書というものがあり、また、現在事項全部証明書という書類がありますので、これらとの対比を明らかにする上で「履歴」というワードと「全部」というワードは必ず翻訳に入れるべきキーワードでしょう。私は履歴をhistoricalで、全部をcompleteで表現していますが、他にも選択肢がないわけではありません。

しかし、履歴事項全部証明書にしろ、現在事項全部証明書にしろ、この文書名では肝心の文書の内容を描写できていないという欠点があるため、この文書の英語名では英語をネーティブとする読者に対して一体何の書類なのかひとめで説明できていないところがあります。私見ですが、この書類名は結構不親切な書類名だと思います。(このほかにも戸籍届書記載事項証明書とか、全部事項証明書とか意味の捉えにくい不親切な書類名がお役所にはたくさんあります)

そこで、翻訳証明書に記載する場合、添付の書類はCompany Registry (Certificate of Complete Historical Records) of ~(会社名)を翻訳したものであると記載することが多いです。履歴事項全部証明というのは書類の細分を説明しているにすぎないので、要はこれはcompany registryだよと言明するためです。

company registryという名称は日本語の書類名には事実として一切含まれていないから翻訳証明書の記載から除いて欲しい、というクレームが過去に一度だけありましたが、(company registryという補足説明を加えている点については)おおむね好意的に受け入れられているようです。

筆責:永江俊一
翻訳のサムライ
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地上権と土地の賃借権

地上権と土地の賃借権



地上権賃借権そして借地権翻訳(英訳)

不動産の翻訳においては、所有権以外の権利については様々な権利があるので、正確に訳すことが求められますが、これは意外と難しいです。なぜなら、土地の権利形態はどこの国も昔々からの習慣、各国の制定法の違いなどがからんで、全世界で共通の全く同じ権利ということがないからです。

それでも所有権については(比較的)容易です。ただし、それでも少しややこしい部分があり、ひとつに日本では土地と建物に別々の所有権が発生しますので、土地と建物を一体の不動産としてとらえる他国の人が日本の文章の翻訳文を読むと理解しにくい部分があるかと思います。更地の場合は、このような建物の所有権のファクターが入ってこないので、わりと単純明快で、更地(vacant land)に対する完全な所有権はfreehold又はfee simpleとするのが一般的のようです。freeholdは英国系、fee simpleは米国系といった傾向でしょうか。

さて、借地権ですが、これはひとことでいえば、正解は「ありません」。

借地借家法(Land and Building Lease Act)の第1章の第2条に定義として次のような条文があります。

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる :
一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。

つまり、人の所有する土地を使用する権利には地上権と土地の賃借権があり、この2つの権利を含んで借地権と呼んでいます。

この条文は法務省の日本法令外国語訳データベースシステムの英語訳によると、

"Land Lease Right" shall mean superficies or the right to lease land for the purpose of building ownership;

地上権がsuperficiesであることには何らの疑いがありません。(地上権は物権rights in remです)

ところが、上の条文を比較すると、
借地権はLand Lease Rightで、賃借権はthe right to lease landとなっていますが、これは違う用語といえるまで区別化されているかといえば少し疑問です。Land lease rightとright to lease landでは単語の順番を入れ替えただけのようにも思えます。

2、3年前に同データベースシステムの借地借家法の訳と借地権と賃借権の訳について当ブログで触れたことがあり、そのときにあった様々な英文の用語のバリエーションはまとめられて上記のように1、2個に収束はされたようです。しかし借地権と賃借権の区別については翻訳者にとっては未だ解決されたとはいえません。

同じ法律の第14条には下記のような条文がありますが、この場合、賃借権はlease rightとなっています。借地権が定義でland lease rightと定義されていましたので、借地権と混同が起こっているようにも見えます。

第十四条 第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。

Article 14 In cases where a third party has acquired the buildings and other items on the land that is the object of the lease right that the Land Lease Right Holder has attached to the land by title, and the Lessor does not consent to the transfer of the lease right or to a sublease, the third party may request that the Lessor purchase the buildings and other items that the Land Lease Right Holder has attached to the land by title at the prevailing market price.

(引用:法務省の日本法令外国語訳データベースシステム「借地借家法」)

ところで、この条文はなぜ地上権と土地の賃借権とを明確に区別しなければならないかという理由のひとつとして良い例だと思いますが、この条文では借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、とありますが、借地権設定者が地上権を設定している場合は、地上権の譲渡又は転貸の承諾をしないとき、という状況は考える必要がありません。地上権者はこのような承諾を一切必要とせずに権利として地上権を譲渡することができるからです。

物権(rights in rem又はreal rights)である借地権を地上権といい、これの英語訳はsuperficiesという定訳が存在していますが、債権(rights in personum又はclaims)である土地の賃借権については、つまり定訳がない、ということになります。借地権としてleaseholdという英語はよく表れますが、これを借地権に使用すべきか、土地の賃借権に用いるべきかは不明です。

日本の土地の権利体系をよく知らない読者の方のために説明を加えますと、地上権は物権として土地に対する絶対的な権利であるのに対して、賃借権はあくまでも土地所有者という人に対する債権であり、権利として地上権ほどの絶対性がありません(すくなくとも理論上)。法律上の権利として地上権と賃借権は全く別物で、従って、権利の内容として、地上権と賃借権をはっきり区別するのは当然であるとともに、賃借権と(地上権をも含めた)借地権もはっきりと区別すべきですが、ところが今のところこれをはっきりと区別した英語の用語を確認していません。

というわけで、借地権と賃借権の英語訳ですが、これはまだ完全な正解は「ありません」。land lease right、right to lease land、lease rightなどが借地権と賃借権の双方にぼやっと使用されている状態に見受けられます。この他に日本法令以外の英文の文章では前述のようにleaseholdなどもよく見受けます。法務省の同日本法令外国語訳による不動産登記法では賃借権はright of leaseとなっています。

現状では不動産の土地の借地権に関する文書について、借地権と賃借権が登場する場合は暫定的に以上にでてきたような英語の用語を適時適当に分けて使用するしかないかなと思います。

もし信頼できる文書の中で借地権と(土地の)賃借権がはっきりと区別された文書を発見した方は、ぜひ教えてください。

筆責:永江俊一

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遺失利益

遺失利益の英語



遺失利益の英語が話題です。契約書の中には損害賠償の条項が必ず入っています。英米の契約書は日本の契約書に比べていろいろな状況を想定して対応方法をあらかじめ事細かく規定しておく傾向があります。したがって、契約書が日本語の場合でも、契約の相手方がアメリカその他の英米法に基づく文化の国の人物又は企業の場合は、その文化を尊敬して、自然にある程度英米法の契約書に近づいた内容になるのが普通です。

損害賠償については、どこまでの範囲の損害を賠償するか、という問題があります。損害賠償をする対象のひとつとしてよくでてくる範囲のひとつが本日の話題の「遺失利益」です。

遺失利益とは、契約したあることを契約の一方の当事者が履行しないために契約の相手方が蒙る損害のうち、契約を約束通り履行していれば得られたはずの営業上の利益が相手方の契約の不履行のために実現できなかった営業上の利益、すなわち遺失した利益という概念であって、英語ではlost profitsと訳します。また、lost businessやloss of profitという表現もあります。

なお、どこまでの損害を賠償の対象とするかという論点に関連しては履行利益performance interest)と信頼利益reliance interest)という概念がありますが、これはまた後日の話題といたします。

本日の話題である遺失利益に関連して、契約の不履行により蒙る損害としては、直接的な損害と間接的な損害に分けると、遺失利益は間接的な損害といえます。また、賠償を受けるにはその金額を確定する必要がありますが、金額を確定しにくい損失ともいえます。

日本の法律・習慣の枠内で認められる損害賠償と、例えば米国の損害賠償を比較すると、日本の損害賠償の範囲の方が狭いように感じます。日本の損害賠償では、まず賠償の責任を負う要件として損害を引き起こした者の故意あるいは過失があり、また過失があったことを証明する責任(onus)は賠償を請求する側にあり(製造物責任/product liabilityを除く)、この要件が損害の補償をときに難しくするようです。また損害賠償の範囲としては、直接損害に限定されることが一般的ではないかと思います(筆者は法律家ではなく、遺失利益の英語訳の話題に関連して筆者の持つ一般的な印象を述べており、法律に関連して正確な情報を提供する意図もなく、また正確性について責任を負うものでもありません)。

それに対して、米国の損害賠償については懲罰的損害賠償(punitive damages)によく見られるように、損害の賠償責任が間接的な損害、金額が確定しにくい損害に拡大される傾向があるように思います。従って、日本語の契約書でも相手方が英米法に従う国の企業、人物の場合は、損害賠償の範囲について予め限定しておくのが転ばぬ先の杖といえるかと思います。

遺失利益は、直接損害と間接損害の分類でいえば、どちらかといえば間接損害(indirect damages)に含まれ、遺失利益については責任を負わない、というコンテクストになっているのが日本語の契約書に多く見られます。

損害賠償の範囲として、直接損害に限ること、間接損害については賠償責任を負わないということが契約書の中で当事者間で予め合意されることが多いわけですが、間接損害と同義又はその範疇に含まれる損害として遺失利益(lost profits)の他、間接損害(indirect damages)、付随損害(incidental damages)、結果損害(consequential damages)、特別損害(special damages)などが多出し、前出の懲罰的損害にはpunitive damagesの他 exemplary damagesという英語などがあります。

責任のディスクレーマーのために繰り返しますが、上記の契約書中の損害賠償の規定についての話は法律の専門知識に基づいたものではなく、翻訳者として契約書の中に出てくる一部の用語についての(日本語と英語の)翻訳に関する一面的な話題です。筆者は法律について専門的な訓練を受けたことはなく、法律的な正確性についてなんら責任を負う資格を持つものではありません。

永江俊一

契約書の翻訳

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