翻訳 ブログ|翻訳のサムライ
翻訳業界、翻訳の仕事に興味のある方、必見!? 翻訳業界の実態をブログにしました。
定款と登記簿の翻訳と公証、認証
公証と認証
「翻訳のネタでなんか分からなくて興味があることない?」と周りの人に聞いてみると、そうですね、公証と認証のことよく聞かれるのでなんか書いてもらうとうれしいですねと言われました。
そこで、公証と領事認証についてまとめてみます。
戸籍謄本の翻訳を求める方で、「公証もお願いします」と依頼される方がたくさんいらっしゃいます。でもよく話を聞いてみると、この場合公証といいながら実は単に「翻訳証明書」を必要としていただけであることがよくあります。かように、公証という用語は普段なじみがないのでほとんどよく理解されないまま使用されることが多いのです。
例えば、外国の当局に提出する日本語から英語にする翻訳の場合、多くの場合に提出者本人ではない第3者である翻訳業者が翻訳をしなければならないという要件があることが多々あります。翻訳はその目的からして原文と全く同じ内容が書かれているべきですが、本人が翻訳をするとバイアスがかかりやすいということが考えられるので、翻訳は第3者がすることに限るということは翻訳の独立性を確保するために当然とも思える論理です(但し、本人が翻訳をして提出をしても一向に構わない提出先国あるいは提出先機関があり、決めつけている訳ではありませんのご注意ください。)
そこで、第3者である翻訳業者が公文書などの翻訳をした場合、その事実を証明するために「翻訳証明書」又は「翻訳の宣誓書」というものを翻訳物に添付することが一般的です。この翻訳証明書には一般的には、1.翻訳をした者(又は翻訳業者)は原文の言語と翻訳先の言語とに精通していて翻訳をするにたる技量を有していること、2.翻訳をした者はその能力の及ぶ限り誠実に翻訳をし、翻訳物は原文の内容を正確に表していること、の2点を宣誓する内容になっています。
ところがこの「翻訳証明書」は少し弱点があります。それは、原文が公文書であるのに対して、翻訳文と翻訳証明は翻訳者(翻訳業者)という私人が書いた私文書であるという点です。
そこで、時に便利であり、また時に実際に要求されることがあるのが「公証」というプロセスです。公証というのは、(例えばこの場合は翻訳についての宣誓文のような)私文書について公証人の前で宣誓ををすることによりこの文書を認証書類にする手続きです。翻訳者がひとり宣誓をしただけでは、宣誓の内容は嘘かもしれないじゃないか、という点を公証人の前で身分を明らかにして宣誓をし、公証人に認証してもらうことにより宣誓の内容について逃げ隠れできないようにするわけです。
公証人はどういう資格の者がなれるのか、という点については各国で異なるようですが、たいていの国では公証人は免許、登録などの形で特定の人しかできないことになっているのが普通です。日本では公証人法という法律で規定があり、公証を行えるのは公証人という国家公務員(特別国家公務員)に限定されています。公証人法が適用される日本では、ということなので、日本の法律が適用されない在日公館(大使館、領事館)ではこの限りではありません。
そこで、翻訳証明書に公証(notarial)が要求される場合には翻訳者は公証役場に出向くことになります。公証人(notary public)に公証をしてもらいます。ちなみに、この公証という手続きは安くはありません。翻訳の公証の場合は英文も含まれるのですが、この場合は通常の認証料金に追加料金が課され、合計11,500円が課されます(平成25年4月時点の価格。公証人は国家公務員なので料金は全国一律です、公証のサービスの詳細情報は最終的にはもちろん情報元の公証役場の情報に依拠してください)
在日の外国大使館領事部、領事館では在日の各国人民のために公証サービスを提供していることが多いです。在日公館の本国政府、機関等に書類を提出する場合で提出書類の翻訳の翻訳証明書に公証が必要な場合、外国人である日本人に対しても領事による公証を受け付けてくれる在日公館もあります。提出国の領事が公証をする場合、自国民でない日本人に対してサービスを提供してくれる訳ですから当然に有料なのですが(国によって料金は違います)、一般に公証役場での公証よりも安価で提供しています。
さて、以上が公証です。
次に領事認証のお話しをしましょう。
日本の公印を外国政府、機関などに提出する場合、受け付ける政府、機関は押された公印が正しく日本政府の公印であることを確かめる方途として日本の外務省の公印確認を要求することが正式です。さらに、外務省が公印確認をした文書について各国領事がこの公印確認を確認するのが領事認証です(但し、ヘーグ条約という条約で領事認証に代わり外務省のアポスティーユと呼ばれる付箋でこれに代えることができるという取決めがあり、この批准国間ではアポスティーユで十分です)。
この領事認証についていえば、日本の公文書を外国に提出する場合の正式な手順ということで、在日の大使館領事部はどこの国でも業務に入っていますが、料金、認証に要する時間など詳細は微妙に異なります。国により、領事認証した書類をその場で処理して返却してくれるところ、申請書と書類をおいて行けば郵送で返却してくれるところ、あるいは処理済みの書類をもう一度取りにいかなければいけないところ、など各国での対応は様々です。また、日本に大使館の他各地に領事館がある場合は、各大使館・領事館の「管轄」がある場合があり、申請する人物・法人の居住する場所を管轄する大使館・領事館に行かなければ、管轄外の大使館・領事館では処理してくれないということがありますので注意が必要です。
以上をまとめますと、
①公証(公証人印)⇒②管轄法務局長による公証人の押印確認(法務局長印)⇒③外務省による法務局長印の公印確認(外務省印)⇒④各国領事による外務省印の認証(領事印/署名)
というプロセスになります。前述のとおり、ヘーグ条約批准国では③と④のプロセスに代わり、外務省によるアポスティーユで充足します。
ところで、①と②と③は煩雑なので、東京を中心とした一部関東地域の公証役場ではワンストップサービスとよばれていますが、公証役場で公証、公証人の押印確認、外務省の公印確認を一括してやってくれます(又はヘーグ条約批准国向けの書類ではこれに代えて公証とアポスティーユを一括で処理してくれます)。とても便利です(翻訳のサムライではこのため、領事認証まで必要な公証役場での公証は一般的に東京で行っています)。
以上が、公証と領事認証の違いと、それぞれの内容の概要です。
説明したつもりですが、やはり少し煩雑で混乱させただけだったでしょうか?外務省のウェブサイトなどに情報がありますので、そちらもご参照ください。また、会社登記簿の翻訳と定款の翻訳の場合も、公証を求められことがほとんですのでこの記事を参考にしてください。
筆責:永江俊一
翻訳のサムライ内の情報ページ: 公証 領事認証
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