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翻訳会社の年度末

平成21年がもうすぐ終わります。
12月31日は福岡では雪が降り脊振山はきれいな雪景色となりました。なんとない1日ですが、やはり1年の締めということで、毎年過ぎた1年の会社のできごと、反省すべき点などを振り返ります。今年は色々うれしいことがありましたが社会全体に不況が広がり翻訳のサムライにとっても財務上はつらい年となりました。

私は生来的に楽天的な性格ですが、ところが後悔はいつもしています。ああすればよかったのに、こうすればよかったのではないか、と常に思い悩みます。翻訳会社としては私も含めすべてサムライに勤める人の「翻訳力」を磨くことが最優先事項であるはずですが、それを実現するために十分な受注量が確保できたか、不適当な指示をしたのではないか、優先度の低いことに目を奪われて迷惑をかけたのではないか、など反省することしきりです。

自分の歩みとしては翻訳会社で頑張る年限はあと8年と一応の区切りをつけていますが、それまでに翻訳のサムライをバトンタッチできるような整った体制と規模に育て上げたいと思っています。
来年も次の点に重点を置き運営していきたいと思います。
1.翻訳技術の向上
2.生産性の向上
3.財務体制の改善
4.受注量の拡大
5.ウェブサイトの改善
これらを目標として、最終的には社会に役立ち(顧客への優良な翻訳サービスの提供)、社員の職業上の幸せを実現する(仕事のやりがいと高い給与と待遇)ことを使命として来年、再来年ずっと頑張りましょう。
ビジネスを提供していただいたクライアント企業、顧客のみなさま、そして翻訳サービスの提供の業務に尽くしていただいた社員のみなさま、この1年ありがとうございました。「Life is circle」という言葉があります。翻訳のサムライの翻訳サービス、サムライを立ち上げた僕の事業、サービスが社会に役立ち、少しでも多くの人にとってプラスの効果をもたらすように祈願しています。
永江俊一



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借地権の英訳

借地権英訳
去年の秋、リーマンショックが起こるまでは日本の不動産は結構人気でした。それで不動産の鑑定評価書の英訳依頼がかなりあったのですが、今年に入ってからは急激に不調になりました。

それで不動産の用語の翻訳については近頃少し遠のいていたのですが、契約書がらみで「借地権」の翻訳の必要がでてきましたので、さてどの訳をあてるものか、という話です。

借地権は借地借家法という法律に規定される権利なのですが、残念ながら借地借家法の翻訳がまだ内閣官房庁から公表されていません。それで、次に権威があると思われるのが不動産鑑定評価基準ですが、これの財団法人日本不動産研究所編著(住宅新報社)の英訳によると、

(鑑定評価基準)
借地権とは、借地借家法(廃止前の借地法を含む。)に基づく借地権(建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)をいう。

(日本不動産研究所編著による英訳)
A leasehold interest in land refers to the interest of the tenant or lessee who holds a ground lease. Ground leases are typically held by the owners of the buildings that occupy leased sites and are classified into two types: the right to be granted by regular ground lease (chinshakuken) which are usually not registered and the right of superficies (chijoken) which are usually registered. Leasehold interests are defined in the Land Lease and Building Lease Law.

まず、日本語の原文に比べて英文のほうがかなり長くなっているのに少し戸惑ってしまいます。日本語の原文では「借地権」と「地上権」、「賃借権」という3つの用語があるのに対して、英文のほうには、a leasehold interest in land、a ground lease、ground leases、regular ground lease、right of superficies、leashold interestsと多様な表現がでています。regular ground leaseが賃借権、right of superficiesが地上権に疑いはないのですが、肝心の借地権は何なのかが少し不明です。Leasehold interests in landも借地権の意味で使用されているようであり、またground leasesも訳としては借地権が来るべきところに使用されており、単にleasehold interestsも日本語との対比では借地権の意味で使用されているようにも見えます。

「借地権」という字面からは(地という文字がはいっているので)ground leaseとしたいように思いますが、これは賃借権のregular gorund leaseと重なるようにも思えますので、避けたいところです。そうすると、leasehold interest in landとなります。難点として4つの単語になりかなり長いですが、借地借家法の翻訳がでてはっきり定義されるまで暫定的に翻訳のサムライでは借地権はleasehold interest in landとあてることにします。

翻訳でよくつきあたる問題ですが、法律などで規定される用語などは特に、全く同じ概念の英語が存在しないということがあり翻訳に苦労することになります。

日本の法律の概念では物に対する権利である物権(real rights)と人に対する請求権である債権(claims)とがあります。物権は物に対する権利なので絶対性があり、この権利は譲渡することもでき、第3者に対しても主張することができます(妨害排除権など第3者に対する物権的請求権)。対して債権は相対的で、契約当事者間の相手方に対する請求権にすぎず、したがって原則的に相手方以外の者には効果がなく、よって相手方の同意なく第3者に権利を譲渡することはできません。土地の使用する権利についていえば、物権である地上権(right of superficies)は土地の所有者の同意を要さず処分(譲渡など)することができ、また土地の所有者すなわち地上権設定者に対して登記請求権もありますので、地上権者が希望する限り必ず土地登記簿に地上権を登記することができます。これに対して債権である賃借権(regular ground lease、上記対訳によるとregularが入っていますが、regularは不要かもしれません)は土地所有者すなわち賃借権設定者に対する請求権なので、相手方の同意なく賃借権を譲渡することはできません。借地借家法により賃借権に対抗力があれば(登記など)物権同様相手方の同意なく譲渡できることになっていますが、そもそも登記請求権がないので賃借権の登記に協力してくれる土地所有者はほとんどいないのが現実です(ただし、法により土地の賃借権については一定の条件を満たせば登記がなくても対抗力を備えることができます)。

上記のような根源的な違いはありますが、両者とも他人の所有する土地を使用させてもらう権利という意味で類似しており、また債権である賃借権についても借地人の生活を守るという配慮から借地借家法でいろいろな修正を加えて借地人の権利を強化し、既述のように多くの点で物権と同様の権利を付与している(賃借権の物権化)ので、借地借家法、鑑定評価基準などではこの2つをまとめて「借地権」としてくくって一つの新たな用語を当てて使用しているわけです。

というわけで、借地権には評価基準の英訳によるとground leaseとleasehold interest in landと2つの可能性がうかがえますが、賃借権との区別の観点からleasehold interest in landの方が無難と判断して翻訳のサムライではこれを採用するというのが結論です。

永江俊一

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ユーズモビリティスキーム用預金通帳翻訳、年内納品は本日で終了です

イギリスのユースモビリティスキーム向け預金通帳の翻訳で、今年中の発送は本日(午後2時まで)のスーパーエクスプレス納期で終了です。スーパーエクスプレスサービスは受注(およびクレジット決済)後即日発送のサービスですので通常納期の料金4,200円の2倍のスーパーエクスプレス料金8,400円になります。
来年からの発送については、来年1月4日営業開始後、順次翻訳作業をしてエクスパック便で郵送しますので、オンライン申込書から年末年始期間中もお申込ください。
通帳翻訳オンライン申込書
http://www.translators.jp/japanese/application-tsucho.html

問合せが多いのでここ数日預金通帳の翻訳の納品についての話題ばかりが続きましたが、明日より翻訳会社のブログの話題に戻ります。多分。
永江俊一

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通帳翻訳、年内特急納品継続中です

預金通帳の翻訳
通帳翻訳の年内発送を希望の方は「特急納期」でお申込下さい。特急納期の追加料金は2100円です。ユースモビリティに要求される預金通帳の翻訳(預金通帳の表紙、見開き部分の内側表紙の翻訳。取引明細のページは含みません)の年内発送の特急納期料金は昨日の翻訳会社ブログに記載したとおりです。

弊社の通帳翻訳申込フォームからお申込下さい。

企業向けの日英、英日翻訳の作業は一部の翻訳スタッフが年末年始翻訳作業を続けます。新規案件の受注は12月30日まで。新規案件の受注開始は1月4日からです。

通帳翻訳、戸籍謄本翻訳の他、会社定款、登記簿の日英訳、不動産鑑定評価書、建物・土地賃貸契約書の日英訳、英日訳などの受注は年末年始期間中も優先的に受け付けます。メールでお問合せ下さい(電話は年末年始中休止します)。

スタッフの皆さん、時間に余裕のある方は任意の話題(近況報告など)でお正月休み中ブログを書いて下さい。日本語、英語いずれでもかまいません。「翻訳会社」、「ブログ」、「翻訳」、「証明書翻訳」、「戸籍謄本」などのワードもさりげなく挿入できると尚可。

永江俊一

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イギリス(英国)ビザ申請用通帳の翻訳、年内発送

通帳翻訳
イギリスユースモビリティ用通帳の翻訳は通常納期での年内発送は終了しました。本日以降翻訳のサムライに通帳翻訳をお申込の方で年内発送をご希望の方は「特急納期」でお申込お願い致します。特急納期の追加料金は2100円です。ユースモビリティに要求される預金通帳の翻訳(すなわち預金通帳の表紙または/および見開いた部分の内側表紙の翻訳。取引明細のページは含みません)の年内発送のための特急納期料金は次ぎのとおりです。

通帳翻訳:4200円
特急納期:2100円
翻訳者による翻訳証明書込み
エクスパック郵送料込み
合計6300円

お客様へ:
弊社の通帳翻訳申込フォームからお申込下さい。
スタッフのみなさん:
年内最後のふんばりです。上記内容で迅速に手配して下さい。
永江俊一

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翻訳のサムライ号小戸に到着

翻訳のサムライ号は唐津の湊を9時45分出発、福岡市西区の小戸ヨットハーバーに午後2時に回航完了しました。
南東の風が順調に吹き、クローズでほとんど一本で博多湾に入り、博多湾内は機走+帆走でハーバーに入りました。穏やかな天気で快適なセーリングでした。
スタッフのみなさん、週末はふるってクルーズに参加して下さい。
船内にパソコンをおき、船内で翻訳業務もできるようにしたいと思いますが、小戸のヨットハーバーはインターネットの無線回線はあるのでしょうか?あったとしても桟橋まではとどかないでしょうね、やはり。。。

回航中ジブのブロックが壊れました。当分代用で走れないことはありませんが、早晩要修理。
本日のブログは、「翻訳会社」も「ブログ」も入っていません。すいません。

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翻訳会社ブログ1位!

ブログは反応がとても速い。
昨日「翻訳会社ブログ」で検索して188位だったのですが、翌日15時間後、すでに「翻訳会社ブログ」で1位(グーグル)に上がってきました。ふつうウェブページとかだと、クロールが来るまで数日かかったりするのに、やはりブログはインデックスィングが速い。書いたすぐあとにクロールが来ているのに驚いています。ブログの管理サイトがFC2なので速いということかもしれない。ブログはキャンペーンとか、すぐに市場に訴求したいときに最適といえそうです。

ブログの性質からして、すぐに反応する半面、時事的な記事を重視するために古くなればすぐに落ちてくるのだと思うので、ある程度恒久的に「翻訳会社ブログ」で上位5位以内にとどめておくには、今後も継続的に更新と、「翻訳会社」あるいは「翻訳」また「ブログ」の話題を続けていく必要があると思います。サムライのスタッフのみなさん、競って記事を書きましょう。

今日はイギリス(英国)のユースモビリティスキーム用預金通帳の翻訳を17件納品しました。今後依頼を受ける分もできる限りは年内に郵送しますので、来年年明け早々にイギリスワーホリのビザ申請のインタビューの予約がある人、通帳の翻訳が必要な方は翻訳のサムライまでなるべく早くお申し込みください。

明日は、唐津市の湊から福岡市の小戸ヨットハーバーまでクルーザー(船名は「翻訳のサムライ号にしました」)を廻航します。天候がくずれませんように。

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翻訳会社ブログ188位

前回2つ、村上春樹とCatcher in the Ryeの話題でしたが、今回は「翻訳会社ブログ188位」と題して、翻訳会社とブログの話を。
ブログはマーケティング上必要、ということは誰しも分かっていることだけれども、維持するのはすこぶる難しい。私個人としては、数年前にこれに思い立ち、「翻訳者永江俊一のブログ」と「翻訳者永江俊一のブログその2」を立ち上げたけれども(ふたつめの永江俊一のブログはひとつめの同名のブログが検索に上がってこなかったのでブログのアドレスが良くないのかなと思って乗り換えたもの)、1年くらい続けて、そのまま多忙にまぎれてやめてしまいました。多忙といい、実は根気が足りなかったことに間違いありません。その時私がブログを書いた動機はひたすらメインの営業のウェブサイトの販促だけが目的でした。今回は、できるスタッフがこのブログを立ち上げてくれたので、複数の人が書きこめる仕組みであり、少し長く維持されることを期待しています。
さて、グーグルで「翻訳会社 ブログ」で検索したところ、なかなか出てこない。カチカチやって、あきらめかけたところ、19ページ目にでてきました。それで、「翻訳会社ブログ188位」というわけです。
まあ、188位も288位よりは上位ですし、すごい暇な人は19ページめくってくれる人もいるかもしれませんので、うれしいのですけれど、以前読んだ本に検索で5位以内に出てこないホームページ(ブログも同様と思ってよいでしょう)は、存在しないに等しい、ということが書いてありました。それで、「翻訳会社ブログ」で5位に上げるのを目標にしてみようかな、と思い立ちました。他のスタッフのみなさんもがんばりましょう。
さて、そのための作戦ですが、ざっくり3つですね。
1.短めの内容でもいいからなるべく頻度を上げて、しこしこ「書き込む」。
2.「翻訳会社」と「ブログ」の言葉をたくさん使用した文章を作る。
3.いくつかブログ用の登録サイトで「翻訳会社のブログ」で紹介してもらう。
会社のURL(http://www.translators.jp/)のホームページからこのブログにリンクしてみました。効果あるかな?
永江俊一

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翻訳のこと、続き

昨日村上春樹のデビュー作「風の歌を聴け」のことを書いた中で、「Catcher in the Rye」の邦訳である「ライ麦畑で捕まえて」について、「意味ありげで好奇心はそそるけれども、意味はよく分からない。」と書きましたが、少し付け足します。この邦訳の他に、次のような訳があるようです。

1952年、橋本福夫訳では『危険な年齢』
1964年、野崎孝訳では『ライ麦畑でつかまえて』 
1967年、英潮社版繁尾久対訳では『ライ麦畑の捕手』
2003年、村上春樹訳では『キャッチャー・イン・ザ・ライ』

翻訳には原文の字づらの意味を忠実に外国語に置き換えようとする「直訳」と、原文の意味することにより重点を置いて外国語に置き換えようとする「意訳」という時に相対立する考え方があります。「危険な年齢」は、catcher も、ryeも入っていませんので、これはもちろん直訳ではなく、おそらくは意訳さえも超えた、「感じ訳」ともいうべきものでしょう。例えば映画の邦題なんかに多いですが、マーケッティングの要素が強く、必ずしも原文自体との関連がありません。「ライ麦畑の捕手」は、直球の「直訳」です。また、意味的にも「翻訳」として捉えると、これが一番正しいといえると思いますが、しかし、読者に対する訴求力という観点からみると、また別の判断であるかもしれません。「キャッチャー・イン・ザ・ライ」 は、外来語全般に便利に使えるカタカナ処理で、無難な選択であったり、モダンな印象を与えることもあります。

この題名は、「Catcher in the rye」のストーリー中の次のくだりからの抜粋と思われます。


Anyway, I keep picturing all these little kids playing some game in this big field of rye and all. Thousands of little kids, and nobody's around--nobody big, I mean--except me. And I'm standing on the edge of some crazy cliff. What I have to do, I have to catch everybody if they start to go over the cliff--I mean if they're running and they don't look where they're going. I have to come out from somewhere and catch them. That's all I'd do all day. I'd just be the catcher in the rye and all. I know it's crazy, but that's the only thing I'd really like to be.

主人公Holden Caulfieldは、よそ見をしていて崖から落ちそうになる子供たちを一日中捕まえて回るライ麦畑の捕まえ人になりたい、と言っています。そして、弟のAllieの使っていたミットを使ってそれをやりたいとも言っているので、作者の題名の意図としては正に「ライ麦畑の捕手」がかなり正確といえそうです。「捕手」というのは少し堅苦しい感じもしますし、捕手というのはキャッチャーというカタカナも十分普及しているので、次の翻訳本が出されるとすると、「ライ麦畑のキャッチャー」などが邦訳とし出てくるかもしれません。

さて、なぜライ麦畑なのかというと、これは主人公Holdenが"If a body meet a body, comin' through the rye."の歌の中の単語"meet"を"catch"に聞き違えたという設定の流れになっています。この曲は作詞Robert Burnsのスコットランドのフォークソング「Comin' Thro' The Rye」(ライ麦畑で出逢うとき)ということです。この曲のメロディーは早くから日本にも伝わり「故郷の空」などとして唱歌として歌われ、その後1970年、歌詞がRobert Burnsの原詩と内容的にはかなり近い「誰かさんと誰かさん」として生まれ変わり(なかにし礼作詞)、ドリフターズが「8時だよ全員集合」の中で歌いかなりヒットしました。「ライ麦畑で捕まえて」は日本での累積販売冊数250万部、「誰かさんと誰かさん」のシングル販売数は31万枚です。
「誰かさんと誰かさんが麦畑 チュッチュッチュッチュッしている いいじゃないか 僕には恋人ないけれど いつかは誰かさんと麦畑」
どちらも大ヒットという点を除いて、「Catcher in the Rye」とそのオリジンである「Comin' Thro' The Rye」との間に内容的な共通性はあまり見られません。サリンジャーのたわいのないいたずら、ということでしょうか。高機能テキストエディタ

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翻訳のこと

村上春樹のデビュー作「風の歌を聴け」。(Hear the wind sing)はこのような書き出しで始まる。
「この話は1970年の8月8日に始まり、18日後、つまり同じ年の8月26日に終る。」
This story begins on August 8, 1970, and ends exactly eighteen days later, that is, on August 26 of the same year.
こんなどうでもいいことをすらっと書いてあってしかもクールな小説がほかにどこかにあったような気がした。J.D.SalingerのThe Catcher in the Rye(邦訳:ライ麦畑で捕まえて)。ところで、この題の邦訳は意味ありげで好奇心はそそるけれども、意味はよく分からない。
村上春樹がサリンジャーの影響を受けた作家のひとりであるかどうかは知らないが、好きな作家であることには間違いなさそう。村上春樹は数年前に同作品を翻訳しているから。この小説は日本では「ライ麦畑で捕まえて」で完全に普及していたと思いますが、村上春樹の邦訳の題は、「キャッチャー・イン・ザ・ライ」。ズバっとカタカナです。

村上春樹は先ごろイスラエルの「エルサレム賞」を受賞したが、受賞時のスピーチで次のようなことを述べている。

"Between a high, solid wall and an egg that breaks against it, I will always stand on the side of the egg."
イスラエルではパレスチナとの間に万里の長城、あるいは元寇防塁とコンセプトを共有する長い壁を築造しており、これが物議をかもしていることは知られていることなので、このセンテンスの「壁」はこれを指すもの、あるいはその他武力を指すものとして紹介するメディアが多かったように思いますが、私が注目したのは彼のその次の発言です。

"Each of us is, more or less, an egg. Each of us is a unique, irreplaceable soul enclosed in a fragile shell. This is true of me, and it is true of each of you. And each of us, to a greater or lesser degree, is confronting a high, solid wall. The wall has a name: It is The System. The System is supposed to protect us, but sometimes it takes on a life of its own, and then it begins to kill us and cause us to kill others - coldly, efficiently, systematically. "

村上春樹によると「私たちはみな多かれ少なかれ卵である」と。そしてシステムと呼ばれる壁が私たちを殺し始め、互いに殺し合いを始めさせる。
ここで彼の意味するシステムは国家かもしれないし、イディオロギーであるのかもしれない。巨大なシステムといえば、ジョージ・オーウェルが「1984年」で描いた未来の管理社会が思い浮かばれ、村上春樹の最新の小説が「1Q84」であるのは偶然ではないだろう。

"I have only one reason to write novels, and that is to bring the dignity of the individual soul to the surface and shine a light upon it. "
小説家の潔い言葉。これは、名言のひとつに加えましょう。

翻訳のサムライ

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Tag : 翻訳

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